中国バブルに乗らなかった(乗れなかった)骨董商

2023-08-28

  • 買取業界の事情

日本がバブルに沸いていた頃は、古美術の世界もバブルに沸いていたそうです

私はまだ当時は子供だったので知る由もないですが、この業界に入って先輩方に聞いた話では名品はとんでもない値段で売れてたし、駄物もそれこそ飛ぶように売れていったらしいです

「昔は何でも売れた、今は何にも売れない」当時を知る人達から何度も聞いた話です

当時の相場や儲かり方など聞くと本当に羨ましいですし、仮に当社が今の仕事量をその頃にこなしていたらビルの一つくらい建てられていたかもしれません

それは言いすぎかもしれませんが、それ位日本の美術品の相場は桁が一つ違ったようです

私がこの業界に入った15年以上前にはすでに斜陽の空気が出ていて「昔だったら〇〇万円だったよ」と業者市場で五万円程で落札された作家物を見ながら言っている人がいました

しかし業界的にはその後、少ししたくらいから中国バブルが始まり、中国の古美術品が驚くほどの値段がつくようになりました

この時流に乗って大儲けした日本人骨董商もたくさん出ました

特に初期の頃はまだ日本の業界市場にそれほど中国人バイヤーがいなかった頃(今は参加者の半数近くは中国人だし、落札品の7~8割は中国行きになっています)

中国美術を学んで目利きになった人は、安めに仕入れて中国オークションや国際オークションで高額で売っていました

またインターネットオークションにもまだ中国人バイヤーがいなかった時は、ヤフオクで仕入れてその数倍数十倍で売る強者もいました

そして基本的にその流れは今も続いていていますが、さっきも書いたようにネットオークションにも業者市場にも中国人バイヤーが数多くいて、そのバイヤー同士で競り合っているので相場は高値で安定していて、なかなか日本人が割り込む余地は少なくなっていますが、それでも目利きで度胸のある骨董商は競り勝って当てています

このように中国美術に強い骨董商と後は当社のような買取業者も、この中国バブルの恩恵を受けています

買取業者に関してはもちろん中国美術で利益が出る事もありますが(ちなみに当社は社内と外部に中国美術専門スタッフがおります)それ以外でもそれまであまり高くなかった、日本の贈答品なども高く買ってくれる中国人バイヤーも多くなってきたので、それらもお客様から積極的に買い取りするようになってその売上も安定するようになりました

そうした古美術業界の時流に乗れた業者は程度の差は大きいですが、利益を上げてこれたと思います

何度もブログにも書いていますが、ここ十数年のこの業界における中国の影響力は本当に大きく、無視する事はできません

もしこのバブルがなく、緩やかに相場が下がっていく日本の美術品とほとんど値段がつかない工芸品贈答品だけだったら今よりも業者市場の数も少なかったですし、業者自体ももっと少なくなっていたでしょう

そしてそんな中、中国の影響をあまり受けずにこの仕事を続けている骨董商ももちろんいます

茶道具や日本画・現代作家など中国人バイヤーがあまり食指を伸ばさなく、相場もある意味安定しているジャンルのものを売り買い続けている人達です

元々はこの業界の中心の分野で3代4代と続く茶道具商や画商の人達もいますし、もちろん当社とは比べ物にならない位の利益を上げている所もあります

それでも昔に比べたら全体的に相場は下がっていますし、中国美術の様な大当たりなどはないと思います

しかし逆にいえばバブルに踊らされず堅実な商売をしていると言えます

相場も乱高下がないので、しっかりとした目利きがある業者は業者市場で仕入れたものを店舗やネットでちゃんと利益を出し続けています

中国に依存している業者は、まずバブルが弾けたら商売自体が成り立たなくなってしまいます(実はその兆候が少しずつ出てきています)

また中国美術は贋物も非常に多く、中国人バイヤーと競り合わなくてはならないので元々かなりリスクは高いです

成功している人達も数十万数百万円はすぐ損したりしています(それくらいの損は何とも思わない資金力とメンタルがない人には無理です)

また買取業者についても同じくバブルが弾けたら売上も低迷するでしょうし、お客様から買い取れる品物も少なくなってしまうでしょう

今の現状でも大手業者が最近特に力を伸ばしているため、一件の買取を獲得するのも大変になってきているのでこれで相場が下がったらかなり厳しくなってしまいます

そう考えるともしバブルが弾けても、バブルに乗っていない業者の方が全くの影響が無いという事はないと思いますが、比較的影響が少なく生き残って行けるのかもしれません

当社もバブル後の事もしっかりと考えて行動しなければなりません

 

 

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