古物買取業者としての最適年齢 「見た目」「体力」問題

2023-06-23

  • 買取業界の事情

サラリーマンの方たちと違い自営業者には定年がありません

またスポーツ選手のように明確な引退があるわけでもなく続けようと思えばかなり高齢になっても続けることができます

実際に70代80代になっても、まだまだ現役で頑張っている業者も沢山います

確かに業者市場で美術品を買う分には、資金があって目利きであれば年齢は関係ありません

ただしお客様の所を日々回って美術品だけでなく、家具や贈答品など様々な品物を査定して買取・運び出しまでこなすとなるとやはり限界はあると思います

だからといって若ければ若いほど良いかというとそんな事もなくて、やはり適正な年齢というものはあると思います

まず第一に年齢というか「見た目」の問題があります

ここで言う見た目というのはもちろん美醜の事ではなく、お客様のイメージする古物商とのギャップについてです

骨董品の買取というとお客様はたいてい年配の方が来るものだと思っていて、40代半ばは過ぎている私なども(見た目に貫禄が無いこともありますが)「ずいぶんお若いんですねぇ」と言われる事はしょっちゅうです

普段だったら若いと言われる事は嬉しいことですが、この仕事をしていて若いですねと言われるときは「ちゃんと分かる人なのかなぁ?」とか「お金持ってるのかなぁ?」等と内心思われている場合も結構あると思います

実際にお客様がその品物の価値を元々は全く分からなかった時に、仮に私が10万円の査定額を出した場合にもし私が年配でこの仕事は40年以上していますという事だったら「そうなんですね、わかりましたお願いします」と即答してもらえたとしても、この見た目だと「本当にわかっているのかな?」「もっと高いんじゃないかしら」などと思われて保留されてしまう事も結構あります

これは査定額が安いからじゃないかとか、対応が悪かったからじゃないかと思われるかもしれませんがそういう事ではない場合が多く(後から連絡がきて買取になる事も多いです)

この話は同業者で同年代の人と話すと本当に共感されます

見た目が9割という本もありましたが、この仕事をしていると若く見られることで損する機会は結構あります

同業者の中にはその対策として白髪をわざと染めなかったり、高価な腕時計をつけたり、名品の買取の際は100万円の束を見せたりして若く見えるかもしれませんがちゃんとお金は持ってますとアピールする人もいます

私はしませんが気持ちは全くわからないとは思いません

ただしそういうアピールはしないかわりに査定する際にお客様の不安をなるべく解消できるように、しっかりと査定額だけでなく説明は細かくするようにしています

それでもやはり古美術の買取査定に関しては20〜30代だと苦労する場面が多いと思います

なので少なくとも40代以上の方がお客様の納得も得やすい気がします

次に「体力」に関してですが見た目と反対で、これに関しては若い方が有利だと思います

やはり年を取ってくると昔出来ていたことが出来にくくなりますし、特に家具などの大物や大量の贈答品を運び出すという事が難しくなります

さらに階段からおろしたり、真夏でクーラーもない中で作業したりとなると余計にそうなります

実際に古美術品の買取というとどこかスマートなイメージを持たれる方も多いと思いますが、実際の仕事の8割は体力仕事になります

査定して買取して、運び出して倉庫や市場におろしてまた出張して査定して運び出してまた下ろしたり積んだりとかなりハードです

なので年配の業者さんと話していても「昔はこんな箪笥ひょいと持てたんだけど、もう駄目だね。だから家具の買取は断るようにしたよ」という事を聞いたり、実際あった話で趣味で集めた大量の器や花瓶の遺品整理で(高価な品物ではない)当社の前に査定に来た業者(年配の方)は「残念ながらうちでは買取は出来ませんね」と言って何一つ買取をせずに帰ろうとしたので家族の方が「全部ゴミとして捨てなければならないですか?」と聞いたら「いや、そんな事はないですけど特別高いものはなくて、これだけ数があればそれなりには売れると思いますけど、これを運び出すのが大変だしうちでは難しいですね」と言われたらしいです

その後に当社が呼ばれて確かに名品はありませんでしたが数も多く、仕分ければそこそこ売れそうだったので10万円ほどで買取させていただきました

お客様も喜んでいただいて良かったのですが、確かに運び出しはスタッフ3人で丸々一日がかりで結構大変でした

これを70代になっても出来るかと言われると自信はありません、そして思うのがこれだけの量があればいくらの利益は出るとかこの家具運べば一万円は儲かるとかわかっても、その後の大変さと瞬時に天秤にかけた時に「すいません、買取は難しいです」と断ってしまう時が来るかもしれません

周りの業者を見ていても年齢を重ねていくと、扱うサイズや量は減っていっている気はします

それを凌駕する位単価の高い仕事を増やせれば問題ないのでしょうが、不思議と家具や大量の贈答品等の仕事をしなくなると仕事自体が入ってこなくなって、名品の買取も出来なくなっていくものです

なので「見た目」と「体力」の観点から行くと40代〜60代位が一番最適ではないかと思います

とりあえず私もあと十数年は全力で頑張りたいと思っています

 

 

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