東京ブラックホール化と 骨董業界

ブラックホールとは18世紀後半から概念・理論としては言われてきましたが、実際にブラックホールの位置を特定できたのは2011年で、撮影に成功したのは2019年とつい最近の話です
私も詳しい事は分かっていませんが、太陽の数百〜数億倍の質量を持ち、光さえも抜け出せない重力を保有しているとされます
もし地球がブラックホールの半径の3倍以内に入ってしまうと、簡単に粉々になってしまうそうです
そんな強力な引力を持ち、入ってしまったら存在がなくなるくらいの状況に今、東京がなっているという考えが東京ブラックホール化という事です
日本が東京一極集中しているというのは多くの人が感じている事だと思いますが、実際にここ数年の人口増(転入から転出を引いた数)は全国1位でここ数年は年10万人以上増加しています
日本全体では人口減が始まっているのに、東京は人口が増え続けています
歴史的に見てみると統計を取り始めたのは1920年(大正九年)でその時は370万人でした
それが第二次世界大戦前の1940年までの20年間でほぼ倍の735万人まで増加します
その後、戦争の空襲や疎開などで350万人足らずまで半減しましたが、戦後の復興とベビーブームによって1945年から1950年までで350万から628万人と急速に戻りました
そして増加はその後も続き1975年に1173万人、現在が1420万人までになっています
確かに政治・経済・文化・教育全ての中心であって、進学や就職をきっかけに東京に来る若者はやはり多く、仕事も遊びも全部揃っていて魅力的な都市であることは間違いありません
それ位魅力的で特に若者にとって強力な引力を持っている東京ですが、問題なのは若者は多く集まるのに他の県に比べて出生率がかなり低いという事です
東京は出生率が全国平均を大きく下回り、全国で唯一1を下回る0.96まで下がっています
財政もいいので子供手当や水道基本料金無料など手当も充実していますが、全国最下位なのはずっと続いています
その背景には賃金は全国1位で他の県よりも稼げるかもしれませんが、それ以上に家賃の高さはをはじめとする物価高で、生活は苦しくなかなか結婚・出産出来ないという事と、周りも未婚者等が多く地方にいるより結婚・出産しなければというプレッシャーがなくいい意味でも悪い意味でも自由な雰囲気が影響していると思います
こうして全国から若者が東京に流入して、東京で働き、企業も発展して税金も増えてメガシティになっていきますが、日本全体を考えると良いことばかりではありません
実はお隣の韓国も日本以上で、全てが首都のソウルに集中していてソウル以外の都市はどんどん過疎化していて全ての企業や大学などがソウルに集中して、出生率も0.55位まで下がってしまっています
この様に首都(大都市)に人口が集中しすぎると少子化などの問題が起きる事は間違いありませんが、骨董の世界から見ると東京はどうなのかというと、やはり圧倒的な中心になります
人・物・金が昔から集まる場所で、江戸時代から日本の中心にありました
戦争で空襲によって大分焼失しましたが、まだまだ他の都市とはレベルが違います
もちろん郊外・地方にも地元の名家・旧家はあると思いますが、数が違うと思います
実際に業者市場に地方から来て仕入れている同業者と話をしていても「東京のゴミはゴミじゃないんだよ」という話はよく聞きます
もちろん東京以外でも京都や鎌倉など歴史上、都(みやこ)だった事があり、大規模な空襲を免れた所もあります
こういった場所からも名品が出た話はよく聞きますが、やはり東京ほどではありません
ただし東京においても、前に書いたような最近の若者を中心とした人口増は我々の業界にはあまり影響がなく、統計上で出てくる戦前から住まわれていた628万人の方達と第一次ベビーブームで生まれた方達(団塊の世代)が買っていた・持たれていた品物が中心となっています
戦前の方達がお持ちだった由緒正しい品物、高度経済成長やバブル期に買われた世界中の高価な品物などが我々の業界を支えていることは間違いありませんし、それが数十年前から未だに続いています
もちろんそういったある意味での遺産にも限りはあるので、いずれ我々の業界も大きな曲がり角を迎えるでしょう
どちらにせよ骨董業界を支えてきたのは東京の生み出す引力と、そこで生まれ育った人達が生み出したお金で買い集められた品物達になります
東京がその力で人を過度に集め、その影響で少子化だけでなく様々な問題が起きているのは事実だと思います
その事に一個人の私としては特に何か出来る事、強く思う事はありませんが、我々の業界が成り立ってきたのは東京の力が大きかったのは間違い無いでしょう