老老相続について 買取の現場で思うこと 前編

いま日本では急速に老老相続(財産を残す人と受け取る人がともに高齢者である相続)が増えてきています
もちろん原因は医療技術の進歩や健康意識の向上によるところが多く、1955年には男女あわせて65歳くらいが平均だったのに今では85歳程になっています
これ自体は良いことですし、これからもおそらく伸びていくのではないでしょうか
それによって相続も90代の方から70代や、80代の方から60代など高齢者から高齢者に行われる事が増えてきました
実際に被相続人の年齢は平成元年(1989)頃は80代は40%程だったのに今では70%を超えています
平成元年なんてついこの間の様な気もしますが、ここまで変わってしまったようです
繰り返しになりますが、平均寿命が伸びていっているのは良い事だと思いますが、老老相続にはいくつか問題もあります
一つは相続する人も50代後半−70代が中心になってしまっていて、いわゆる現役世代に資産が移動しない様になっています
データでもはっきりしていて平成元年(1989)には日本全体の金融資産残高が30・40代合計が全体の38%あったのが2010年代には19%に半減していて、逆に60代以上は32%から58%と急激に増えています
これは30・40代の資産が減っているのではなく(横ばい)60代以上の資産が増えていると言う事です
これも15年ほど前のデータなので最近はさらに増えていると思います
特に最近の株高・不動産価格の上昇によって、資産を持つ高齢者の成長は拡大していて、もちろん退職金などの影響もありますがそれ以上に相続による資産増が大きいのでしょう
しかし60代以上の方に多くの資産が入っても、すでに家も所有していて子供も独立していると大きくお金を使う事はなく、貯金し続ける場合が多いと思います
そうするとそのまま次の相続になり、その時は子供達も高齢なためまた資産が移動するだけで社会で循環しないままになりがちです
これが経済成長の停滞の一つとも言われています
当社は遺品整理に伴う買取が多いため、買取の際に色々とお話をさせていただきますがやはり私(40代後半)よりも一回り位上の方たちが多いです
自分に置き換えて考えると例えば相続があったとして(私の場合はそんな資産を持った親ではないので、その点は関係ないのですが)やはり60歳を過ぎてからだと特に使い道はないかもしれません
それが30歳の頃(会社を辞めてこの業界に入った時)だったらその資金を元にもっと早く会社を設立して、失敗したかもしれませんが成功していたら今よりも大きい規模になっていたかもしれませんし、失敗したとしても社会的にはお金は循環していました
今だったとしても年齢などを考えると急拡大などは考えづらく、それは私に限らずみんなそうだと思います
それが例えば相続先が30代が中心だったらもっと起業家は増えると思いますし、家の購入や子供への教育にも多めに使えて社会にとってもメリットが大きいでしょう
実際に買取の現場での話でも、骨董品の買取などはそこまで大した問題ではなくてもやはり不動産の相続に悩んでいる方が多い印象です
当社は買取場所が都心部が多いので余計にそう感じますが、最近の地価高騰によって資産価値が上がり相続税を払うために手放さなければならないというお話をよく聞きます
それでも今お金に困っていて切羽詰まっている方はほとんどいなくて、親が買って自分達も住んでいた家なので愛着はあるけど相続税対策で手放さなきゃならなくて残念、築年数は50年過ぎているからリフォームするとすごく高くて諦めたという様な感じの方が多いです
そもそも自分達も家を持っていて、子供達も独立している方たちが多いので大きな家は必要ない場合が多いのでしょう
確かにこういった現場で私よりも年下の方(30−40代)から遺品を買取させていただく事はほとんどありません
これでは確かに資産の有効活用はなかなか進まないかもしれません
こういった事が原因か分かりませんが、相続税が2015年から税率が変わって増税されました
これにより都心部の不動産価格の上昇も相まって、相続税が増えてその分は国庫に入ります
国はさらに増税を狙っているかもしれませんが、私はそれはそれでどうかと思います
しっかり納税もし続けてきた人達の財産に高い税金をかけて、巻き上げる様なやり方は(もちろん再分配の観点からある程度は必要ですが)あまり賛同出来ません
それよりは生前にもっと現役世代に、資金を渡せる様な仕組みを作った方がいいかと思います
長くなってきたのでまた老老相続に関しては、他にも生の声を聞くと色々大変な事があるので別で書きたいと思います
また買取業者からお話しさせていただくと、都心部で不動産などを相続する方は税金やリフォームなどお金がかかると思いますので、遺された骨董品やリサイクル出来るものは捨てずにしっかりと売る事をお勧めします(また品物の売却によって荷物整理が進めば処分費用の軽減になります)
もちろん不動産の値段に比べたら少ないかもしれませんが、場合によっては解体費用がそのまま出た事もありますので、面倒臭がらずにお問い合わせください