外貨を稼がなければならない時代に、骨董業界の特異性

日本は「失われた30年」と言われるようにバブル崩壊後、長期間の不景気状態に陥っています
バブル崩壊後に株価と不動産価格は大暴落して、長期のデフレ経済に突入してしまいました
給料は上がらず、税金だけが高くなり少子高齢化は加速度的に進みました
その間に諸外国は経済成長を続けて、1995年からの30年でアメリカは賃金が2.6倍、韓国は3.3倍、ヨーロッパ諸国も約2倍と伸びているにもかかわらず、日本は0.99倍になっています
その間デフレが続いていたので物価高で苦しむ事は無かったのですが、相対的に経済力が低下し続けて来たのは間違いありません
コロナ禍が終わり世界的な需要増加によるインフレは日本にも影響を与えて、ついに日本もインフレの時代になり今度は物価高に悩まされています
賃金もやっと上昇してきましたが、物価上昇には追いつかず実質賃金は3年以上マイナスになっています
つまりどんどん貧しくなっているという事です
もちろん全員が貧しくなっている訳ではなく、富裕層の数はアメリカについで2番目ですし、最近の株高・不動産バブルと投資ブームで資産を増やしている人も多いのですが、全般的にはやはり厳しい状況の人が増えているのは増えている気がします
さらに日本はこれから少子化・人口減も進むので、特に若い起業家などはいかに海外進出していくか、いかに外貨を稼げるようになるかという事を発信している人も増えています
実際上場している大企業などは売上の半分以上が海外という事も珍しくありません(ちなみにトヨタ自動車は76%が海外の売り上げになります)
もちろん中小零細企業が海外に進出する事はなかなかハードルが高く、それもあって中小と大企業の格差は広がっていきます
それでも規模は小さくても、やはり海外に販路を広げていかないと尻すぼみになっていってしまいます
そういう時代の中で骨董リサイクル業界に関していうと、他の業界と少し事情が異なります
私がこの業界に入って少しして本格的に中国バブルが始まり、骨董市場にも中国人バイヤーがどんどん参加するようになり、少ししてリサイクル市場にはタイ・フィリピンなどの東南アジアバイヤーが参入してきました
人数からしても骨董市場は半分は中国人ですし、リサイクル市場は人数は少なくても、落札比率は全体の半分以上だったりします
そしてその影響力は年々大きくなりどちらの業者市場も、彼らなしでは成り立たなくなっています
実際に当社の業者市場に出品している品物の売り上げからしても、半数は海外の業者ですしある意味インバウンド需要を取り込んで、日本円ですが実質外貨を稼いでいるともいえます
また業者市場だけではなく、インターネットの世界(ヤフオクやメルカリ)でも落札者の多くは海外からの顧客の注文を受けた代行業者になります
もちろんジャンルによってその比率は変わりますが、かなり幅広いジャンルで代行業者が買っています
売っている側から見ていると、日本人は買い負けている印象を受けています
そしてそれは小売でも感じていて、当社が年に数回出展している代官山tサイトでのイベントでも来場するお客様は日本人の方が多いのですが、お買い上げいただく金額は外国人の方の方が遥かに高いです
もちろんコロナ禍の時は、外国人の方自体が来れなくなっていたので殆どが日本人の方が買っていただきましたが、正直売り上げは低迷していました
骨董市に出展している同業者に聞いても、最近はインバウンド客を上手く集客出来ている骨董市は盛況で、かなり売り上げを伸ばしているみたいです
この様に我々の業界はあえてリスクを背負って、海外進出・輸出しなくてもある意味旧来のやり方のままで外貨を稼げる状況になっています
本来なら外国人に売るには海外に出ていって為替のリスクや税関の手続き・商習慣の違い・語学の壁などを乗り越えていかなければならないのに、むしろ海外の方が日本に来て、日本語を覚えて、日本のやり方にあわせてくれるという、かなり恵まれているといえます
それがこの業界がそこまでの不景気になっていない、大きな要因だと思います(もちろんその中での競争は激化していて規模の小さい業者は厳しくなってきています)
ただしこの状況もいつまで続くかわからないので(中国バブルの崩壊や日本にある美術品の枯渇)、色々と試行錯誤はしていかなければなりません