
タイトルにあるような事を書くと、綺麗事だとか嘘くさいと思われるかもしれませんが、これは店を出して買取を本格的に始めてから14年ほど経ってみて身に沁みています(老舗に比べればまだまだですが)
当社のような買取業者に関わらず品物を仕入れて売るビジネスというのは、売り上げから仕入れを引いたものが粗利(儲け)になります
もちろんビジネス的には粗利は多ければ多い方がいいのですが、意外とこのビジネスはそうとも言い切れない所があります
しかし私がこの業界に入った頃は「タダみたいな値段で買ったものが、〇〇万円になったよ」「誰々さんが店に持ち込まれた花瓶を一万円で買い取ったら、それが〇〇万円になったみたいよ」「夢あるなぁ」などと言う話がよく聞こえてきました
今の時代は当時よりもこの業界も情報がネットなどでも手に入りやすくなって、お客様自身で相場をある程度調べることも出来ますし、メルカリなど自身で売るツールも充実してきています
さらに大手を始め以前に比べて買取業者もかなり増えてきているので、昔のようなやり方(知らない人から安く買う)がなかなか通用しなくなっています
それでもこの業界はまだそういう昔の感覚が抜けきれていないと感じる事があります
その原因の一つは例えば飲食店などと比べると常連のようなお客様は少なくて、一回だけの付き合いになる割合が多いからという事があると思います
なので一回の取引の時に儲けようという気持ちが働くのかもしれません
単純に一回の取引だけを考えると仕入れ(買取額)は少なければ少ない程儲かります
もちろん粗利を考えると仕入れだけではなく売り上げ(売り方)も重要になります
少し話が逸れますが、意外とここが適当な業者が多いような気がします
売り先がほぼネットになっていたり、一つの業者市場に丸投げしたり、店や骨董市だけで捌いていたり、そうすると買い取れる品物も大分狭まりますし売れる値段も相対的に安くなる傾向があると思います
そうするとますますお客様からしっかりと買う事が出来なくなってしまいます
こうして一回での儲けだけを考える業者だと長い目で見ると、なかなか続くのが難しい時代になってきていると感じます
昔だったら情報もないし、自身で売れるツールもないし何より競合他社も少なかったので通用していましたが、今ではそれでは通用しなくなってきています
また、たまにあるのですが買取査定に呼ばれて品物を見ていると、なかなか良いものが揃っていて査定に時間がかかっているとお客様の方から「どうせ最後は捨てるだけだから、金額は気にしないからなるべく持っていって」と言うような買取業者にとっては悪魔の囁きの様な事を言われる事があります
そんな時にそういうセリフに完全に甘えてそれまでの査定も無視して、相当安い値段を提示してしまうと(例えば一万円とか)例えそれで買取が成立したとしても、その場はもちろん儲かりますがそのお客様との関係はそこで完全に終わります
どういう事かというと、例えばその後に荷物の整理をしていてまた同じ様な品物が出てきたとしても「呼んでもどうせ安いから、面倒臭いし処分してしまおう」と捨てられたりしてしまいますし、一万円しか払わない業者を知り合いには絶対に紹介する事はありません
当社のような買取業者は先程も書いたように取引としては一回限りのお客様の方が多いのは間違いありませんが、実はその業者が伸びていくかどうかはリピーターや紹介の量に比例しているような気がします
特に良い品物をお持ちのお客様の知り合いは、かなりな確率で良い品物をお持ちだったりします
この辺りを無視して安く買うことが勝ち、みたいな考え方だとジリ貧になっていってしまいます
実際に最近あった話になりますが、都内の大きなビルの解体に伴う残置物の買取に呼ばれていったときに、置いてあったのが大きくて派手な家具や花瓶類が大量にあって、マイセンなどの有名メーカーのものは破損しているといったような状況でした
家具類はイタリア製の大型家具が多くて、花瓶や鏡なども大型で国内で売るのはなかなか難しいものばかりでしたが、東南アジア系の業者が集まる業者オークションに出せばそれなりに売れそうだと判断して、トラック6〜7台分の量を買取りしました
運ぶ手間もかなり掛かるし、いってもそこまで高額で売れるのは難しかったのですが、量も大量だしあまり安く買うわけにはいかなかったので適正だと思う金額で提示し、了承してもらいました
そうして運び出して支払いを済ませたら担当の人に「実はお宅に来て貰う前に別の業者(かなりの有名店)を呼んでいて、その業者はトラック数台分のマイセンなど高級食器や海外の彫刻などを買い取って貰って、その業者が買い取れない残り物をお願いしたんだけど、買取価格はお宅の方が高いくらいだったよ」と言われました
正直あまり嬉しい話では無かったのですが(お客様に喜んでもらえたのは嬉しいのですが、できたら最初に呼んで欲しかった)それでも満足してもらえて当社も仕事になったので結果良し思っていました
そしたら後日その担当の人が別のビルの仕事を、今度は1番に依頼してくれました
さらに「今後また同じ様な現場があったら、またお願いするからよろしくね」と言ってもらえました
結果前の現場で1番最初に呼ばれた業者より、トータルでは利益も出る事になると思います
もちろん常に1番に呼ばれるように集客に力を入れる事も大事ですが、やはり資金力・知名度などを考えるとなかなか難しい部分もあるのでとにかくリピート・紹介を増やすためにも一回の利益だけを求めるのではなく、毎回しっかりと適正な金額で買い続けることが長い目で見ると大事だと思います