モノの値段は自分以外の人が決める

2024-07-29

  • 買取業界の事情

買取にお伺いさせていただいた時に、買取が成立しない時もあります

理由はいくつかありますがそのうちの一つが、お客様の品物に対する評価が高すぎたり思い入れが強すぎたりして、実際の相場とかけ離れてしまっている場合があります

「30年前に高島屋で〇〇〇万円で買った人間国宝の壺」「オーダーメイドで職人にこの家にあうように作らせた家具」「母が着道楽で家一軒分のお金を使って買った着物の山」などなど

こういったものはもちろん買取自体は出来るのですが、現在の相場が買った時の数十分の一以下になっている場合も少なくありません

やんわりとお客様の希望額を伺ってもやはり相当期待されている時などは、しっかりと今の相場を伝えて(場合によってはネットの情報も見せながら)なぜ今それほど値段が下がっているのかも説明しますが、こういう場合は買取が成立する可能性は低いです(こちら側としてもこういった場合は積極的に買取をその場で決めない様にしています)

また高く売りたいとは思っていなくても、思い入れや品物の出来の良さなどから「母が嫁入り道具で実家から買ってもらったもので、大切にしていたものだから捨てるのが忍びなくて」「すごく高かったのに一回しか飾ってなくて、本当にきれいな雛人形なの」お気持ちはわかりますがこのような品物は今は売る事が難しく、買取・引取はお断りする事になります

そうなるとまれに「結局金目の物しか買わないのね」「こんなに出来がいいのに何にもわかっていないのね」などと言われたりします

こういわれても強く反論などはしないようにしています、例えば理詰めで強く説明して論破?したとしても誰も得をせずに、むしろお客様に不愉快な思いをさせる事になるので、なるべく穏便にお断りするようにしています

またこのような場合の逆でお客様から「え!そんなに高いの?」「それが売れるの?他にもあったけどみんな捨てちゃった」「呼んでよかった、こんなに売れるとは思わなかった」などと言われる時もあります

また言わなくても買取査定金額を伝えた後の表情や態度から、思っていた以上の評価に満足頂いたことが伝わる事も結構あります

特に実家の整理などで品物が乱雑にある場合によくあって、お客様があまり(全く)評価していなかったもので今需要が高いものなどがあった時におきたりします(昔は安く買えた品物や、無料で集めていたものなどが多いです)

例えば明治以降の新版画・満州などに軍隊でいったときに貰ったもの・昭和の時代のおもちゃや野球カード・集めていた硬券・昔は評価されていなかった現代アートなどなど沢山あります

このような場合はお客様の満足度も高いですし、結果として当社も売れるものを買取らせていただくのはうれしいですし、その後当社が販売した先のお客様も満足していただけることも多く、まさに三方良しという形になります

そしてこのようにお客様の思いと、今の相場の乖離が起きてしまう要因はあたり前ですが需要と供給のバランスになります

欲しい人が多ければ多いほど相場は上がっていきますし、さらに世の中に出回る数が少なければどんどん上がっていきます

これは古美術だけの話ではありませんが、特にこの業界は価格の乱高下が激しい気がします

もちろん値段=価値ではありません

しかし買取の現場ですと残念ながら、人間国宝より江戸時代より例えばプラモデルの方がはるかに高かったりします

日本美術も中国美術もモノ自体は変わってなくても、評価が30年前に比べてまるで違います

需要が高くても供給があるものはそれなりの相場で推移していきますが(例えばカメラや洋酒、洋食器など)需要が急に大きくなってそれに需要が追いついていないと数年前の倍とか場合によっては10倍以上(一部ソフビや超合金、新版画、一時の中国美術・現代アートなど)になります

特に今の時代はネットなどで相場も可視化されていますしそれを簡単に調べられるアプリなどもあり、一部古美術品(真贋や時代の古さなどの知識・経験が必要)以外は一般の方でも多くはおおよその価格も知る事ができます

それでも調べられない方などは自分の思う(想定する)値段がありそれが今の相場とかけ離れてしまうと話がまとまるのが困難になります

なるべくお客様の希望には近づけれるように努力はしますが、それでも相場を超えて買い取りする事は出来ません

また安く買い叩かれたと思われるのも嫌なので、明らかに見解に相違がある時は無理して買わないようにするようにしています

「今はあまり評価が高くないのでもう少しお手元に取っておいたほうがよろしいんじゃないですか」等と伝えるようにしています

結論をいうと品物の値段(買取価格)はお客様が決めるものでも我々買取業者が決めるものでもなく、それ以外の人たちが決めるものになります

その人たちの需要によって相場は変わっていきますし、その相場を買取業者は常にアップデートしていかなければなりません

そうしないとお客様か業者か、どちらかが不当に損する事になってしまいます

そうならない様に常にその時その時の適正な価格で買取が出来るように、努力しなければなりません

 

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