日々買取査定で様々なお客様のお宅にお伺いさせていただきますが、当社のような古美術品をメインとした買取業者のメインターゲットは団塊の世代の方達になります
なので少なくとも1000件を超える件数のお宅にお伺いさせていただきました
その中で感じたことは、今の現役世代に比べてやはり過ごしてきた生活の豊かさです
もちろん東京など都市部に住み、古美術品などの売却を検討される方達なので平均よりは上の方が多いかもしれませんが、それでも我々の世代からしたら、大分違いがあると思います
まず感じるのが家具や食器が違います
今はニトリやイケヤ、ドン・キホーテ、100均などで一式安く揃える事が出来ますが当時はそういうものがなく、特別高価なものではなくても普通に揃えるのに結構な金額がかかっていました
確かに子供の頃の記憶で新しい家具(食器棚)を2つ買った時に「合わせて30万円位した」というのを何となく聞いた気がします(ちなみにうちはごく普通の中流階級でした)
でも今は食器棚も5万円出せば買えますし、食器もこだわらなければ数千円出せば家族分一式揃います
これはまさに企業努力によるものなのでもちろん否定はしませんが、少なくとも当時は普通の生活をするのにかかるコストは大きく結果的にはそれが回りまわって景気につながり、自分たちの給料にも反映されていったのでしょう
また文化が変わった事もありますが、お祝いなどで送りあった贈答品の量と質も今では考えられない位です
後は当たり前のようにお子様やお孫様が多くいて、奥様が専業主婦だった方が本当に多いです
これも今は一人一人の意識や社会・常識が変わってきているので一概に今と比べてどうこうという問題ではありませんが、そういう常識を支えらる経済力というものも平均で見ると違う事は確かでしょう
そして数多くの買取業務時にお客様とお話ししていて思うのは、当時は経済力以上に今よりも先の方が良くなるという思いがあり国に対する信頼感(年金・福祉)も高かったので消費に躊躇がなかったのでしょう
特に高度経済成長からバブル期にかけては「ジャパン アズ ナンバーワン」という言葉に酔い、将来に対する不安も少なかったのだと思います
たしかに私も中学生の時の塾の先生に「日本人は優秀だからこれからも景気が悪くなることはないよ」と言われたことは今でも覚えています
そしてその頃は思ってもなかったようにバブルは崩壊してその後「失われた10年」「失われた20年」「失われた30年」と世界の中で日本の存在感は小さくなり続け、国際競争力も下がり続けてしまいました
諸外国が経済成長を続ける中で日本だけデフレ経済の中で喘いでいて、その間に人々が手にしたものは無駄なものが減りシンプルでリーズナブルなものになっていきました
もちろん使うには問題ないですし(耐久性には差がありますが)むしろ改良もされ続けているので使い勝手は良くなっていますし、貧しくなっているわけではありませんが、品物の質は大きく違いますし趣味や美術品などある意味無駄なものにかける余裕も無くなっているように感じます
つまり見た感じ生活レベルは変わってない気はしますが、緩やかに質がおちて余裕がなくなっていっているような気はします
そうなると当社のような買取業者の未来も暗いと言わざる負えません
例えばバブル期に高く買った美術品などは、正直今の相場ですと数分の1から数十分の1になってしまった品物なども珍しくありませんが、それでも値段はつけられますし売る事も出来ます
贈答品に関しても質が良かった時代の物は10年前くらいから、中国や東南アジアの業者が競い合って業者市場で買ってくれます
それが美術品自体が少なくなったり東南アジア製の100均で買った食器ばかりになってしまったら、そもそも買取自体出来ませんし売る事も難しくビジネスとして成り立たなくなってしまいます
もちろん一部の富裕層が現代アートを買ったり、高級時計や高価なデザイナーズ家具を買ったりはあると思いますが圧倒的に数の多い中間層の人達が持っている品物の質が下がってしまうと厳しいです
ですのでここ20~30年かけて少しづつ貧しくなってきた事が、我々のような古物業界にこれからかなり暗い影を落してくる事は間違いないと思います