古物、古美術、アンティーク、買取
こういうのものに携わってきて、ある程度年数が経ち自分が経験したことや同業者を見たり聞いたりしていて思うことの一つが、タイトルに書いた事です
少し前は買取業者で苦戦しているのは知識がなくて、品物の価値がわからず安い買取価格を提示して他社に負けたり、お客様に納得してもらえなかったりというパターンが多かったのですが、最近は充分目利きで大体の品物は相場も知っていて、さらに真面目で安く買おうとはしない人なのに苦労しているという話を聞くようになりました
これは買取ができないのではなく、お客様も喜んでもらい買取り自体は出来るのですが一年終わって数字を見てみると、会計士から「この経費を考えると買取価格が高すぎます、半分くらいじゃないと利益は出ません」と言われたとの事
でもそんなに安く評価するわけには行かないし・・・という話を聞きました
じゃあ安く買取すればいいのかと言うとそうではなく、そもそも競合も沢山いますしネットでいくらでも情報が入る時代です
あまりに安い買取価格を提示しているとほとんど買取が出来なくなってしまいます
また業者が売る場合になっても相場を調べたり、お客様自身で売るアプリも揃っているのでネットがない頃の古美術店のように好きなように自由な値付けをする事が難しくなっています
つまり昔に比べると古美術・骨董業界は大分「健全」になっていると思います(もちろん一部押し買いやテレアポ営業、人形・着物をエサに貴金属ブランド品を狙う業者などはいますが・・・)
逆に言うと業者からすると、昔ほど簡単に稼げる時代ではなくなったと言う事になります
業者にとっていい時代を過ごしてきた人達は(当社は残念ながら知りません)「昔は良かったなぁ~」とよく言っています
「売るのは難しくなったし、買取に行ってもお客が賢くなっちゃって駄目だよな」
こういう業者は今、軒並み苦戦をしています
厳しくても時流に乗って生き残っていかなければなりません
しかしそうは言っても最近特に厳しくなってきている気がします
現在この業界も大手が予算をどんどん増やしていて、ある程度対抗して集客しようとすると、どうしても経費が掛かってしまいます(これをいかに効率的に出来るかが成功できるかどうかの分かれ目ではありますが)
そうなるとトータルで考えると買取価格を安くするしかないのですが、目利きで真面目な人ほどそれが出来なくなり、数字だけで判断する外部の人から見ると(それも大事な視点ですが)ビジネスとして考えると失格となってしまいます
でもそれは難しい所で私もそうですが、経験を重ねて知識がつけばつくほど買取価格は高くなっている気がします
知っているだけに安くは言えない、あまり利益は出ないけど品物を逃すよりはいいか・・・と思うようになって確かにビジネスではなくなってしまいます
これは売る側の場合でもそうで、例えばアンティークショップでも技術があって真面目に直しをしている業者ほど、一つの家具に時間をかけてしまうので(その分そのまま価格に乗せられたらいいのですが、そうすると売れなくなってしまいます)
極端な話、売値一万円の家具の仕上げに一日以上かけてしまったりします
これでは売れても儲からないのですが、こだわりが強いと納得がいかないと売りたくないという事になってしまいます
もちろん悪い事ではないのですが、折角の技術がまるで活かせていなく勿体ないです
実際、家具屋と話すと「家具は真面目にやればやるほど儲からないよ」と言っています
ある程度で妥協して回転をしていかないと駄目なのでしょうが、それがなかなか難しいです
このように買取でも販売でも、目利きだったり技術があって真面目に取り組めば取り組むほど苦しくなってくるという現象が起こります
でもそのままだと仕事自体が継続できなくなってしまうので、不要なコストを削減したり売り方を工夫したりしながら努力していくしかありません
ただ真面目にやっているだけで、大手に飲み込まれてしまわないようにしなければなりません