r>g「21世紀の資本論」を骨董買取の視点から見ると

2023-08-03

  • 買取日記

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これは「21世紀の資本論」で有名になった式ですが、r=資本の収益率 g=賃金の上昇率という事ですが、わかりやすく言うと資本(資産)によって得られる富、つまり資産運用によって得られる富は労働によって得られる富よりも成長が早いという事です

筆者のピケティが過去300年にわたる20ヵ国以上の富と貧困に関するデータを15にわたって調べ上げた結果で、資産運用による成長率は5%くらいで賃金の上昇率は1~2%ほどになるらしいです

つまりお金持ちはどんどんお金持ちになり、そうでない人は相対的にどんどん貧しくなっていくという事ですし資本主義が成長していけばしていくほどこの傾向は高まり、将来的にはいわゆる中間層がいなくなりごく一部の超富裕層と多数の貧困層だけになってしまうという事です。

なんだか殺伐とした時代になりそうです

確かに日本においては、長きにわたって労働によって得られる給料はほとんど上がっていないのに税金・社会保険料は右肩上がりで上昇しています(つまり手取りは減り続けています)

ですが株価はバブルの様に上がっていて、それにつれて特に都心の不動産価格も上がり続けています

この一面だけを見ても頷けます

そしてこうした富は相続・世襲によって引き継がれるので、労働者との格差はまずまず広がっていく事になります

もちろん相続税などで目減りはしたとしても数億~数十億のお金(もしくは会社)から再度インカムゲイン(役員報酬や株式配当、家賃収入)が入ってきます

資産を何も持たない人とはスタートラインから違います

そういう事を踏まえて、日々買取でお客様のところにお伺いする買取業者の視点から見てみると当社のような骨董品を中心に買取を行っている場合、比較的資産の多い方たちに呼んでいただける機会が多いです

そういう方達にもいくつかのパターンがあります

まず第一のパターンがそもそも出(で)が違う人達です

旧家・名家と言われるような人達や三代続く医者の家系、もともと資産家で政治家になった、先祖が上級武士・上級軍人だったなどなど

こういった方たちは都心の一等地に広い住居を構え、極端に華美ではなくても良い物を持っていて、周りの人達も同じような境遇の人達が多いのか、貰うものもレベルが高く「普通の家には絶対ないなぁ」という品物が当たり前のように置いてあったりします

こういう家は文化的なレベルも高い場合が多く、有名な作家や画家、先祖が高名な茶人や政治家そして宮家と付き合いがあったりして、通常世の中に出回らない希少な品物がある場合もあります

こうした品物の整理というのが、我々のような仕事をしている者にとって大きなチャンスになります

そういうチャンスを逃さないためにも日々、知識を積み重ねて無駄使いせずに資金をためることが大事だと思っています

またこうした人達は代々資産を受け継いで、さらに子供たちに受け継がせようとします

資産運用もしっかりし、これからも代々続いていく可能性が高いと思います

次に第2のパターンが高度経済成長~バブル期にビジネスで大きな成功を収めた方達です

今の日本からは考えられないほどの好景気だった頃、投資で成功したり不動産業や貿易商など(というかこの頃はどんなジャンルでも成功すれば莫大に儲けられて、古美術の世界もそうだったらしいです)で財を成した方達は使い方も派手で、高価な品物を世界中から買っていました

この勢いが経済の循環を促して、ますます景気が良くなっていったのでしょう

こういう方達はいわゆる豪邸を立てて、持っている物もデパートの外商や銀座の画廊などで高く購入した品物が多く、また着物・洋服・ブランド品・貴金属なども沢山お持ちだったりします

そして当社のような買取業者からすると貴金属などを別にすると(金の相場上昇により当時よりも高値になっているため)ほとんどのものが当時よりも大きく下がっている場合が多く(例えば着物・茶道具・日本画・西洋アンティークなど)時に当時の100分の1の相場しかない事もあります

当時が高すぎたのか、今が安すぎるのかはわかりませんがご購入された本人からの依頼の場合、なかなか今の相場をご説明させていただいても理解してもらえず、たまに「何もわかっていない素人じゃないか」とか「安く買い叩こうとしているんじゃないか」と警戒されてしまう事もあります

そういう時は決して無理に買取しようとはせず、説明だけしておとなしく帰るようにしています

お客様がご納得いただかない状態で買取をしてしまうと、誰も得をしないですし後々にクレームやトラブルになってしまう可能性もあります

それにしてもこういった方達の住まいや持っている品物の量や質(今高いか安いかは別として)を見ていると、もうこんな時代は来ないだろうなあと思ってしまいます

そして最後に第3のパターンですが、特別豊かな家に生まれたわけではなく、また事業で成功したわけでもなく本人が努力を重ねて一流大学に進み、大手企業に入り真面目に定年まで働き続けた人達です

平均よりも高い収入を得て、さらに年功序列・終身雇用の中で今よりも安い税金・社会保険料、日本自体が高度経済成長からバブル期と「良い時代」を過ごした方達が都内に一軒家を所有していた場合、最近の不動産価格の上昇によって資産が増大して、高齢になった時に売却して悠々自適な老後を過ごされたり、亡くなってしまった場合でもご親族にしっかりとした資産を残すことができます

本当に本人の努力の賜物で立派だと思いますが、時代の後押しもかなり大きかったと思います

今の40代以下が同じようなコースを辿っても、同じような結果になる事は難しいのではないかと思ってしまいます

またこういった方達の家の売却に伴う整理や、遺品整理に呼ばれる事が当社は多いのですが第1・第2のパターンのお客様の時のような驚くような品物に出会う事は少ないのですが、それでも今の現役世代に比べると贈答品や趣味で集めたものなどをお持ちの方もいらっしゃって当社がお役に立てる事も多いです

そして日々買取現場で1~3のすべてのパターンを見ていても、今とそしておそらくこれからの日本を考えても当社のような買取業務は今後厳しくなっていく事は間違いないでしょう

物を持たなくなったという生活スタイルの変化もありますが、全体的な生活の厳しさと将来に対する不安で当社が取り扱える品物自体が今後減っていく事でしょう

古物の世界からでもいろいろ見えてくるものです

 

 

 

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