買取現場から見る「掛軸」と「ロレックス」の需要と価値

2024-02-06

  • 掛軸買取

「掛軸」と「ロレックス」まるで異なるモノですが、古物買取業者としては同じ方から両方の査定を依頼されることもあり、相場などは常にチェックしていかなければなりません

しかしこの二つでは様々な点(というより全て)が違いますが、特にここ20~30年は需要が全く違います

ロレックスは日本だけでなく世界中で人気があるため、常に需要に対して供給が不足していて人気のモデルですと数百万~数千万する事も珍しくありません

さらにコロナ禍による各国のロックダウンなどによって工場の生産もストップしましたし、その後も原材料(金やステンレス鋼)の高騰やインフレによる人件費の高騰、それに日本においては円安も加わって価格は上がる一方です

それでもその価格の上昇があっても欲しいという人がいるために、相場は高値安定しています

実際ロレックスの生産本数は年間100万本程なのに対して、需要はその数倍はあると言われています

これでは価格は下がりませんし、限定モデルなどの希少なものは定価の数倍の値段を付ける事もあります

なので定価で人気モデルが買える正規店を何件も回る人が増え、2016年頃より「ロレックスマラソン」という名前が生まれるまでになりました

特にデイトナやサブマリーナといったスポーツモデルは人気が高く、購入が困難で年単位で行っている人もいます

たしかに周りを見回してみても友人・知人の中で何人もがロレックスを所有していて(ちなみに私は持っていません)、していなくても欲しいという人は沢山います

ですので一部の現代アートの様に作られた価格評価ではなくて、まさに実勢価格といえます

それに比べて掛軸ですが、バブル崩壊以降の古美術市場の衰退だけでなく和室(茶の間)の減少、茶道具人口の減少などもあり相場もピーク時の数分の一から数十分の一という事も珍しくありません

そんな中で例外が十数年前からの中国経済の盛り上がりに乗じた、中国美術バブルでした

張大千・呉昌碩・斉白石といった有名絵師だったり古画の類の掛軸など数百万~数千万といった値段が付く事もあり、買取業者がこぞって中国物の掛軸の買取に力を入れるようになりました

実際業者の口ぐせが「中国物にしか夢はないよ、日本の掛軸?売れない売れない」でした

たしかに2~3年前に川合玉堂の掛軸を10本ほど美術倶楽部で売却した時に「今日はよく売れたね、でも昔だったら1本の値段だよ」と言われました

いかに昔はこの業界にも夢があったかと思い知らされました

そしてその相場の下落の原因は当たり前ですが、需要がないという事です

たしかに先ほどのロレックスの逆で友人・知人そしてその知り合い辺りまで行っても「誰々の掛軸欲しいんだよね」とか「掛軸収集が趣味なんだよね」などという人はいません

日々買取現場や業者市場で大量の掛軸を見たり、売り買いしているとこの掛軸はいくら位と相場は分かってきますがこの先のエンドユーザーはあまり見えてきません

掛軸の需要は確かに減ってきていて、掛軸を製造する職人も後継者不足もあり廃業する事業者も多くなっています

ロレックスが人手不足で需要に応じた生産が出来ないのとは対照的と言えます

そしてこうした需要の有無というのは、お客様の方にも伝わっている事が多いです

今は情報はいくらでも取れますし、それ以上に実感の部分で「ロレックスは欲しい人が多い」「和室が減って掛ける所がない」という事も分かっています

少なくとも掛軸に関わらず着物や茶道具などは、基本的に需要が少ない事は丁寧に説明すればほとんどの人が理解してくれます

その上で今の相場でしっかりと査定すれば大体の方は納得していただいて、売却していただけます

ただし、この「需要がない」という部分があまりに浸透しすぎてしまうと「どうせ売れないから捨ててしまおう」とか「呼んだって二束三文だろうから面倒臭い」という事になってしまうのが怖いです

実際に買取現場で査定していたらゴミ袋に掛軸が十数本入っていて、聞いたら「どうせ売れないでしょ?」と言われたのですが、とりあえず見させてもらったら何人か有名な人の作品があって、全部で10万円近くになった事もありました

ですので掛軸や茶道具、着物などはとりあえずは捨てないで買取業者に連絡してください

安かったとしても買取できる場合は多いですし、中に名品が混ざっていれば思わぬ高額になる場合もあります

 

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