
日本のバブル崩壊以降、縮小していたこの業界において、ここ10年以上牽引してきたのは間違いなく中国バブルでした
日本の業者市場でも中国美術品を日本人骨董商・中国人バイヤーが競い合ってバブルを引き起こし、その恩恵を業界の幅広い人達が受けていました。
この間の数年で余裕で一生分稼いだ人達も、何人も見てきました(羨ましい)
少なくともここ10年15年はそれがなければ、この業界はもっと衰退していたのは間違いありません
そしてその中国バブルは高額な中国美術だけではなく、日本の茶道具や贈答品までに広がり業界全体の売り上げ・パイを拡大してきました
特にここ数年顕著ですが、ブランド・貴金属をメインとする大手買取業者が骨董業界にも進出してきたり、業者市場自体が増えたりしたのもベースとして中国需要が大きかったのは間違いありません
そうした流れが中国経済の停滞の影響で、ここ1〜2年で大きく変わってきたと思います
まだ一般の人達にはそこまで伝わっていないかもしれませんが、中国経済は一時のバブルが終わっているようで、日本にいる中国人バイヤーも口を揃えて「景気が悪くなった、特に最近」といいますし、それは業者市場での買い方を見ていると嘘でない事は伝わります
高額な美術品の相場も以前に比べたら下がっていますし、有名絵師の掛け軸などもピークの半分くらいになったり、少し古い工芸や写し等も昔なら高く売れたものが今ではほとんど評価されなくなったりしています
そして特に顕著なのが中国美術よりも、日本の贈答品などの相場の下落です
最初中国美術から始まったバブルが、徐々にそれ以外の品物にも広がっていき、それこそ何でも良いから集めたいという感じでしたし、中国人バイヤーも増えて競合するので、価格もとても日本人が買えない値段まで上がっていって、お店で小売りするより全然高くなったりしていました
その頃から比べると本当に数分の1くらいの値段になってしまいました
それでもまだまだ業界内の勢力は大きく、骨董系の業者市場によっては半分以上が中国人という所もありますし、いなければ成り立たない市場がほとんどだと思います
そしてそういった状況を尻目に勢力を維持、拡大しているのがタイ・フィリピン・ベトナムなどの東南アジア系のバイヤー達です
彼らも10年以上前から大型家具や雑貨など当時から日本人が買わなくなった、リサイクル品を業者市場で買っていましたがそれが徐々に拡大してきて、リサイクル系の業者市場では全体の半数以上を彼らが買うというような感じになっていて、まさに彼らがいなければ業者市場自体が成り立たなくなっています
特に定価の高い豪華な家具や派手な照明など、日本のバブル期だったら売れていたような品物も好んで高く買ってくれます
またタオルや食器などの贈答品やブランドのないバック等も、自国で需要が高いのか競り合って相場が上昇しています
今やそういうジャンルは、中国人バイヤーよりも高く買うようになりました
そもそも円安で割安になっている事も大きいと思いますが、東南アジアではまだまだ「メイド・イン・ジャパン」のブランドは健在で、元々の品質が良くて丁寧に使われてきた中古品は、それこそ飛ぶように売れるみたいです
そして最近の流れを見ていると、大型家具や贈答品類は相変わらず人気ですが、最近は徐々に骨董品にも手を伸ばしてきている気がします
本当の名品はまだまだ日本人骨董商や中国美術だと中国バイヤーが強いですが、そこまでいかない評価の骨董品などは彼らの方が高く買うようになっています
そうなってくると、ますます彼らが集まる業者市場に品物が集まる様になり(噂を聞きつけた日本の業者がせっせと運んできます)
品物が多くなれば買う業者も増えて、さらに相場が上がるといった好循環が生まれてきています
彼らの姿を見ていると日本が経済成長をしていて、どんどん豊かになっていた時代はこんな感じだったのかなと思ってしまいます
業界全体が中国や東南アジアにおんぶに抱っこなのは少し情けない気もしますが、それが現実なので仕方がありません
実際当社も彼らの存在がなければ、お客様から買い取れる幅もかなり狭くなってしまいますし、しっかりとした値段で買い取る事も難しくなってしまいます
そこはある程度割り切って彼らの需要や流行りなども、しっかりと把握しながらお客様の満足度と当社のビジネスを向上していこうと思っています
その上で切実に思うのは、今はまだ日本に高度経済成長からバブル期辺りに国内だけでなく、海外からも色々な物を買い漁った高品質な品物が残っているから何とかなっていますが、これが団塊の世代の整理が進んで枯渇してしまうと、彼らからそう遠くない未来に見向きもされなくなってしまう状況になるのではないかと言う事です
そうなった時にどうやって生き残っていくのか、早めに考えていかなければなりません