「目利き」という落とし穴

2024-03-21

  • 買取業界の事情

骨董業界という世界は当たり前の話ですが、目利きと言われる人たちに対して大きいリスペクトがあります

それはみんながわかっている事として、そうなるにはもちろん一朝一夕ではなれず、たくさんの時間とお金をかけて辿り着くものだからです

まず本や実物を何度も見て覚えて、買取現場や業者市場で毎日のように売ったり買ったり損したり儲かったり騙されたり大儲けしたり大損したり、また他の人に聞いたりしながらになります

そしてそういう道を潜り抜けてきた人たちが、業者市場でも茶道具なら誰々さん、油絵なら、浮世絵なら、李朝ならと様々な刃口(ジャンル)で目利きと呼ばれるようになります

そういった人達の多くは業界歴も長く、良い時代(骨董バブル)を過ごしてきたので、もう働かなくてもいい位稼いできた人達も多いです

そういう人達はいいのですが、そこまで稼いではなかったり歴が短かったりする人たちで、目利きといわれる人たちが苦しんでいる姿を最近見かけるようになりました

それはこの「目利き」というものの落とし穴のようなものに、嵌まってしまっている人もいる様な気がします

業者市場ではいくら目利きでも同じ刃口(ジャンルに)に競る人が二人以上いれば安くは買えないですし、場合によっては売値を超える場合もあります

特に1つのジャンルに特化している人などはライバルが増えてくると必然的に仕入れが厳しくなりますし、周りの目もあるので買いたくない値段で買わなければならない時もあります

もちろん買取でも相見積もりなどの場合は同じですが、業者市場の競りの方が意地などが出てしまって適正価格で買うのが難しいと思います

また最近の骨董業界の相場を見ていると、ジャンルによっては昔の相場の半分とかそれ以下になっている場合もあります

そうなると仮に同じ量をこなしていたら単純に売上も減っていくことになります、特に頑張って5年10年と損もしながら覚えていったらそのうちに相場がどんどん下がっていって、折角苦労して覚えた事がビジネス的には成功出来なくなるような事にもなってしまいます

もちろんこれは株や不動産と同じで誰にも正確に予想できる事ではないですし、逆に覚えはじめの頃よりも相場が上がっていく事もあるのである意味ギャンブルな面にもなりますが、そのギャンブルに負けてしまうと苦労する事になってしまいます

またそのジャンルを極めてきて周りからも認められた人は、なかなか他のものに手を出すのが難しい感じが見受けられます

それはプライドもあるでしょうし、周りの目もあってなかなか厳しいのでしょう

例えばずっと茶道具を買い続けていた人が突然売れそうだからとカメラを買ったり、こけしを買ったりするのは難しいと思います

「誰々さん急にどうしたの?」「最近厳しいんじゃない」という本来どうでもいい外野の声も、人間というのは弱いものでそういう雰囲気や声に縛られてなかなかチャレンジはしにくいものです

それに比べるとプライド低く、何にでもチャレンジして儲かりそうなところにいろいろ首を突っ込むような人の方がリスクヘッジという意味ではいいのかもしれません

そして業者市場だけでなく買取の現場をこなしてきて思うのが、確実に昔に比べていわゆる目利きの人が儲けにくくなっているという事です

市場に関しては書きましたが、買取業者にとっても品物(骨董品など)に関する情報や相場なども昔に比べて楽に手に入るようになりましたし、それは業者だけではなく一般の方に取っても同じです

さらにメルカリなどの様に一般の方が売る事の出来るツールも充実してきているので、業者を使わずに個人間で完結する事が増えてきています

そうなるといくら目利きであったとしても全く意味がありません

また最近勢力を伸ばしている大手業者は莫大な広告費で集客した後に、人海戦術でスタッフを送って知識経験がなくても本部に写真を送って査定して買取を行うところもあります

つまり昔と違ってほとんど勉強しなくても会社の看板があれば(上場企業だったり、テレビcmを流していたり)何とかなるようです

もちろんお客様に品物に知識がある場合などは、話にならなく帰されるような事もよくあるようですが

その点当社のような小規模の業者の場合は、そういった看板の力がないので知識・接客・適正価格が常に問われます

また先程から書いているように今は骨董業界も一ジャンルに特化した専門店では厳しく、またお客様の様々な要望に答えることは難しいです(例えば骨董品だけでなく、大型家具やレコードまで買取ってほしいなど)

なので当社も〇〇専門店というようにして敷居を上げて門戸を狭めるのではなく、幅広いジャンルに対応できるように努力していこうと思います

ただいくら昔に比べて難しくなったとはいえ、やはりこの仕事の基本は「目利きだ」と思いますし、知識や経験はお金や地位などのように誰かに奪われたり、なくしたりする事はない基本であり最強の武器である事には間違いありません

ですので当社も幅広く、そして常に知識や相場はアップデートし続けなければなりません

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